セラピスト取材メディア『THERA-FIL』は、平均寿命ではなく健康寿命を延ばすために、病院以外で本当の健康を届けるために活躍しているセラピスト(Therapist)を1つの記事(Film)として取り上げています。
病院勤務から国家試験専門塾の設立に至るまでにどのようなストーリーがあったのでしょうか。
鰐部さんのFilmを覗いてみましょう。
目次
鰐部さんが理学療法士になろうと思ったきっかけを教えてください!
人を支えられる仕事に魅力を感じたからです!
元々中学生のときに野球をおこなっていたんですが、それがきっかけで腰椎椎間板ヘルニアを患ってしまったんです。
病院でのリハビリではなく、近所の整体に通っていました。半年ほどで部活に復帰したんですが、休養期間は自分にできるトレーニングをこなしながらほかの部員のサポートをおこなっていました。
そのときに、人を支えることに魅力を感じたんです。
それもあって、高校生で進路選択の際はトレーナーになりたいと思っていました。ただ調べた際に理学療法士を知り、理学療法士はトレーナーと比べて定量的な評価に基づいたアプローチをおこなう点に魅力を感じたんです。
また、元々理系で人体について詳しく知りたい、論理的に思考したうえでアプローチをおこないたいと考えていたので、理学療法士を目指しました。
鰐部さんが国試勉強の指導を始めたきっかけを教えてください!
同期職員の浪人生の方に勉強を教えたことがきっかけです!
臨床1年目、国試浪人をされている方と同じ職場になりました。その方は私と同じ年に国家試験を受けて、不合格となった方でした。
働きながら勉強もされていたんですが、国家試験2か月前の模試で合格ラインに至っていなかったんです。
そこで、私が国家試験勉強について教えることになりました。
学生時代、国家試験勉強は得意分野だったので、その知識を生かして仕事終わりに私の国試勉強で培ったノウハウをすべて彼に詰め込み、勉強を教えていたんです。
その結果、その方は国家試験に無事合格できました。
この国試浪人の方との出会いが、国家試験で苦しんでいる受験生の役に立ちたい、人生をこの仕事に捧げたいと思うきっかけとなったんです。
すぐに行動に移し、翌年には卒業した養成校から依頼を受け、国家試験対策講師となり1学年120名ほどの学生に講義をおこなってきました。
そして、そこで培った知識やスキルを武器に『鰐部ゼミナール』を設立しました。
鰐部さんが手がける教育事業について教えてください!
PT・OT専門の国家試験対策塾を経営しています!
『鰐部ゼミナール 理学・作業療法士国家試験専門塾』として、おもに国試浪人の方々を対象とした国家試験合格に向けた指導をおこなっています。
塾生の8割が浪人生、およそ1~2割は現役生です。
指導の仕方も工夫している点がいくつかあり、1つはマネジメント面です。目標期日を設けてしっかりスケジュール管理などをおこなっています。
また、塾生の理解度に応じて教え方も工夫しているんです。塾生のなかには、指導しても記憶に定着しにくい方も一定数いらっしゃいます。
指導しながらその方に合った方法を見つける、もしくは論文やほかの業界で広まっている勉強方法や指導方法を取り入れ、その方々に伝えるようにしているんです。
鰐部さんが事業にかける想いを教えてください!
理学療法士の平均レベルを上げ、医療業界の底上げをしたいという想いがあります!
世の中の風潮としては、理学療法士の学力が下がっている、養成校を減らす必要があるなどさまざまな意見が飛び交っています。
そのような意見があったとしても、急に世の中が変わることはありません。毎年新人の方がいて、新人の学力レベルもさまざまであることは当然です。
新人だけでなく現役の理学療法士だとしても、いわゆるマッサージPTのように思考せず何も工夫しない方がいるとしたら、その方々に向けて知識や技術のレベルの底上げをおこなう必要があります。
ただそんな方々に焦点を当て、医療の質を上げようと活動している方は少ないです。
私はそういった勉強が苦手な方に対しても、知識面と技術面において平均レベルに底上げするような活動をおこなっていきます。
取り組みとして、『全身の運動器アプローチマスター動画シリーズ』という運動器のアプローチをまとめたものを、2021年にリリースしました。
各疾患別の評価や質の高いアプローチをまとめた動画を『広尾整形外科』さまと協力して作成したんです。今後は、運動器だけでなく脳血管疾患についてまとめたものを作成したいと構想しています。
国試のサポ―トだけでなく、臨床に出てからも活用できるようなコンテンツを準備し、勉強が苦手な方のフォローを通して、理学療法士全体のレベルの底上げのために尽力していきたいです。
鰐部さんは今後の展望についてどのように考えているんですか?
学校教育や卒後教育にも注力していきたいです!
まず、私は養成校と関わる機会も増えており、国試塾に入る前に試験に合格してほしいと思っています。
塾に入ると1年という時間を使うだけでなく、養成校で学んだことを再度勉強するので、正直二度手間なんです。
そこで、養成校側が設けている国試対策の指導方針や計画を伺い、私がアドバイスや指導方法に関する提案をおこなうなど、コンサルのような形で関わっているんです。
私が関わった養成校の国家試験合格率は、100%近くになっています。
また、養成校でなかなか指導が行き届かない実技については、先ほどの『全身の運動器アプローチマスター動画シリーズ』といった教材を導入していただき、学生の技術レベル向上に努めていきたいです。
さらに卒後教育にも注力しており、脳血管や運動器など各分野ごとに評価方法やアプローチを体系的に学べる動画教材があります。
臨床で悩んだら必ず解決できるようなコンテンツをつくり、勉強が得意でも苦手でもアプローチの質が担保されたものを患者さまに提供し、医療の質向上に貢献していきたいです。
THERA-FILを通して伝えたいことはありますか?
専門的なスキルを学び続けることが大切です!
「セラピスト業界の未来がみえない」とおっしゃる方もいると思うんですが、私は違うと考えています。
PT、OT、STは、勉強すればほかの職種にない非常に高い技術と知識を手に入れられます。専門的にしっかり学ぶことで、必ず道は広がっていくはずです。
実際に医師や経営者は優秀な人材を常に探しています。しっかり学び続けていけば必ずスキルアップ・キャリアアップできる仕事です。
私は、とても可能性がある仕事だと思います。一緒にセラピスト業界を盛り上げていきましょう。
鰐部 雄心(わにべ ゆうし)
理学療法士の資格取得後、国試浪人の方との出会いから国試勉強の指導に人生をかけることを決意。現在は『株式会社geluk』代表取締役として『鰐部ゼミナール』を設立し、国試浪人の方に対して12年指導をおこなう。国試指導だけでなく現場でも使えるコンテンツを制作し、セラピスト業界全体のレベルを底上げするために邁進中。