セラピスト取材メディア『THERA-FIL』は、平均寿命ではなく健康寿命を延ばすために、病院以外で本当の健康を届けるために活躍しているセラピスト(Therapist)を1つの記事(Film)として取り上げています。
病院勤務から一般社団法人設立に至るまでにどのようなストーリーがあったのでしょうか。
森さんのFilmを覗いてみましょう。
目次
森さんが理学療法士になろうと思ったきっかけを教えてください!
リハビリを受けている自分の写真を見たことがきっかけです!
私は生まれた直後に左手が動かず、リハビリを受けていたんです。当時のことを詳細には覚えていないんですが、中学生のときにリハビリを受けている自分の写真をみて知りました。
写真を見たときは、部活で器械体操部に所属しており、父が「バク転するようになるとはな・・・」と感慨深く言われたことを今でも覚えています。
その写真をみながら、私は理学療法士になるんだろうなと直感として感じていました。
高校生のときに理学療法士の仕事内容を大まかには調べましたが、いずれはなるものだと思っていたので、事細かに調べることはありませんでした。それよりもどうやったら理学療法士になれるのかについて調べた記憶があります。
森さんは学生時代から新卒にかけてどんな20代を過ごされましたか?
やりたいことに熱中した20代で、東日本大震災が大きな転機となりました!
大学に入学してラクロス部に所属しました。ラクロスが中心の大学生活で授業も休みがちでしたね。
最終学年でもラクロスに集中したい気持ちが強く、4年生のときは実習に行かず、1年留年して5年目で実習に行ったんです。結局そのときもコーチをおこなっていたので、卒論もギリギリに完成しました。
そのため、理学療法士のイメージがほとんどないまま就職しました。大学では、単位と資格を取るための勉強しかしてなかったからだと思います。
学校卒業後、2年間病院に勤務しました。学生時代の勉強が現場につながらないこともあり毎日何をしているんだろうと思いながら勤務していました。
そのときに、東日本大震災が起こりました。被災者を支える方の姿が私のなかで響き、何もできていない私を変えたいと強く思いました。何も取り組んでいなかったので、当時の私に嫌気がさしてこのままではいけないと思ったんです。
24.5歳でしたが、漠然とスポーツで日本を元気にしたい気持ちが芽生え始めました。震災で暗い状況のなか、スポーツニュースが輝いて見えていたんでしょう。
しかし、当時の私はスポーツリハの経験がなかったので、いろいろ調べるとアスレティックトレーナーの資格を見つけて、アスレティックトレーナーの学校へ入学を決めました。
また、今振り返ると病院を辞めて気持ちをリセットしたかったんだと思います。
とにかくスポーツの現場を見てみたかったので、「滋賀 スポーツ 整形」で検索したところに電話で求人状況を問い合わせ、アルバイトをさせていただきました。
そこから2年間アルバイトをしながら、アスレティックトレーナーの学校に通い、卒業後はアルバイト先で常勤として勤務させてもらいました。
スポーツを中心に診ている病院で、アスレティックトレーナーとしてもさまざまな現場や選手を担当させていただき、キャリアを積むことができました。
休日や有給を使ってトレーナー活動を始め、退職するころには有給が足りなかったんです。合宿参加などで有給を前借りしたときは、さすがに焦りを感じました。
これをきっかけに、フリーでスポーツ関係の仕事をしてみようと考えたんです。
森さんがおこなっているスポーツリズムトレーニングについて教えてください!
滋賀県にある病院の先生が見つけたトレーニングです!
リズム感をもとに、パフォーマンスの向上を目的としています。リズム感というとダンスのように聞こえやすいですが、このトレーニングで心も身体も鍛えることができます。
ダンスの難しさをイメージしやすいですが、みんなそれぞれのリズムがあると思うんです。その自分のリズムで、好きなように動けるようにトレーニングをおこなっています。
自分の得意なリズムのパターン以外でも動けるようになると、身体の自由度が増して運動の楽しさが増します。
このトレーニングを学びに来られる方は、理学療法士をはじめ、学校の先生や幼稚園の先生、ダンサーの方など、あらゆる職種の方に関心をもっていただいています。
トレーニングを学習された方向けのオンラインサロンも運営しており、さまざまな職種の方と交流できるので、それぞれの立場からの見解を聞くことができます。
理学療法士は、動作分析をおこなえることが強みなのでそれを共有できることがいいですね。トレーナーは、孤独になりやすいので有効活用していただきたいです。
現在の私の活動は専門学校の非常勤講師、ポーツリズムトレーニング教室の運営・普及活動、オンラインサロン運営をおこなっています。スポーツリズムトレーニングの受講者の方と交流があり、現場へ呼んでいただくこともあります。
東北でもボランティアでスポーツリズムトレーニングを提供でき、私が今の活動ができているきっかけになったこの地へ恩返しができました。
森さんの仕事に対する想いを教えてください!
スポーツリズムトレーニングをステップアップのための補助段となる存在にしていきたいです!
点数や勝ち負けなど、見える評価は分かりやすいです。しかし、そればかりにこだわると楽しく運動できない方も出てきます。
コロナ渦でもそうでしたが、メンタルが落ち込むと活動に不自由さを感じます。身体は自由なのに心が不自由なことはとてももったいないので、運動でメンタルが整えられる流れをつくりたいです。
技を伝えるだけでは指導者として不十分だと思っていて、現在コーチングを学んでいます。どう伝えれば、より良い思考や感情をもってもらえるかと考えながら指導に当たっています。
子どもだけではなく、お母さま方にもアプローチしたいと思っており、子育てだとワンオペの方にどう手を差し伸べられるかなど、周りをいかに巻き込めるかが課題です。
今後は、もっと保護者の方とコミュニケーションをとれる機会を増やしていきたいと思っています。皆さんで子育てするための手段としても、リズムトレーニングを取り入れているんです。
スポーツや運動はうまくならないといけない、挑戦しないといけないという風潮が強くなりがちですが、そこではない中間のステージもあっても良いと思うんです。
走るのが遅くても良くて、それでも走ることを楽しんでもらえれば運動する意味があると思います。
体育を休む子どもの理由の多くは、恥ずかしいという感情です。私は理学療法士ですが、評価をしないことを心がけています。⚪️×や点数をつけないようにしていて、できなかったことをマイナス評価しません。
肯定するだけではその子のためにならないので、人格は否定せずに何かを伝えた後は受けた側の反応をみることを重要視しています。一方的にならず、ラリーができるコミュニケーションを心がけています。
見えないところを育てるのは難しく、見えないことをどう見せるかが課題です。しかしやりがいがあり、結果として技がついてくることを現場に立ちながら感じています。
技がついてくると、そこでは勝負したほうが良いですね。スポーツでは、評価するべきステージとそうでないステージと段階があると思うんです。
スポーツリズムトレーニングを、ステップアップのための補助段となる存在にしていきたいです。
森さんの今後に対する想いを教えてください!
スポーツリズムトレーニングを普及させ、オリンピックに携わりたいです!
今後は、オリンピックに携わりたいと思っています。
現在は子どもたちをメインに指導しているので、それをハイパフォーマンスの選手の方々にぶつけるとどんな結果につながるのか試してみたいです。
目標は、2032年のブリスベンオリンピックに帯同することです。そのためにも周りのスタッフの生活を安定させることや、会社の仕事量を増やしていきたいと考えています。
スポーツリズムトレーニングも今後もっと普及させていきたいですし、日本代表選手にも指導できる機会が設けられればと思っています。
選手たちに知ってもらうことで、認知が広がるスピードも上がる可能性がありますし、認知が広がることでトレーナーが働ける環境も増やしていきたいです。
THERA-FILを通して伝えたいことはありますか?
リハビリ室でスポーツリズムトレーニングをやってみてください!
自分が健康でないと、ほかの方の身体はみれません。自分自身がポジティブでないと子どもたちはすぐに感じます。
逆に、子どもの現場は人が成長する場所で、子どもたちの雰囲気が明るいんですよ。そこから学ばせてもらうことも多いんです。
リハビリ室も成長する現場なので、明るく運動するってすごく大事だと思います。
スポーツリズムトレーニングをリハビリのアプローチとして活用していただき、少しでもリハビリ室の雰囲気が明るくなれば嬉しいです。
仕事は、どんな方とも一緒にやりたいと思っています。スポーツリズムトレーニングに興味がある方、一緒にスポーツリズムトレーニングを広めていきましょう!
森 宜裕(もり よしひろ)
理学療法士の資格取得後、総合病院で臨床経験を積む。東日本大震災をきっかけに、スポーツ現場でトレーナー活動を開始。現在は一般社団法人を設立し、スポーツリズムトレーニングの運営・普及活動、専門学校非常勤講師、トレーナー業、オンラインサロン運営などスポーツにまつわる事業を幅広く展開中。