セラピスト取材メディア『THERA-FIL』は、平均寿命ではなく健康寿命を延ばすために、病院以外で本当の健康を届けるために活躍しているセラピスト(Therapist)を1つの記事(Film)として取り上げています。
整形外科クリニック勤務の理学療法士が病院外で活動をおこなうまでに至るまでにどのようなストーリーがあったのでしょうか。
千代田さんのFilmを覗いてみましょう。
目次
伊藤さんが理学療法士になろうと思ったきっかけを教えてください!
野球部のマネージャーをしていたことがきっかけです!
高校生のときに野球部のマネージャーをしていました。将来の進路を考えていたときに当時の監督先生が理学療法士を勧めてくれたんです。
試合のときに理学療法士が選手をサポートする姿を見ていたことや医療関係の仕事に興味があったこともあり、理学療法士の仕事に興味を持ち始めました。
オープンキャンパスで、理学療法士の仕事を詳しく知ることができました。私が野球部のエナメルバックを持っていたところ、教授が話しかけてくれたんです。
その教授は有名な野球選手の身体をサポートすることもあると教えてくださり、そんな環境があることを知りました。しかし、実際の大学生活ではもちろん医学的な基礎知識を学ぶことが多かったです。
野球に触れる機会は多くありませんでしたが、医療以外に活動できる場所があるのは学生ながら心のどこかで考えていたと思います。
伊藤さんが現在の事業に至るまでの経緯や内容を教えてください!
クリニック勤務を経て、臨床に立ちながら地域活動もおこなっています!
国家試験を目前に控えているにも関わらず、就職活動に苦戦していました。そんなとき教授が野球選手のサポートができる地元の整形外科クリニックを紹介してくださったんです。
その整形外科クリニックは老若男女、慢性疾患からスポーツ分野までを扱っているのはもちろん、デイケアや訪問などの介護分野まで理学療法士が関わっていました。
ここでなら多くの経験が積めると思い、試験を受けることを即決し、採用していただけました。
就職して4年目のときに出産を経験し、それが大きな転機となりましたね。
知識・技術研鑽が積極的なクリニックでたくさんの経験を積ませていただいていた分、長期の出産・育児休暇は今までにない不安を感じたんです。出産で自分の身体が変わったこともあり、今までのスキルがどんどん廃れて現場に戻れるかとても不安でした。
しかしこの経験が大きなきっかけとなり、自分の身体がどう変わったのかを知りたいという想いをもち、整形外科とは少し離れた分野のウィメンズヘルス分野をオンラインやオフラインで学びました。
また、子どもができたことでどんな働き方をしたいか改めて考えるきっかけになったんです。
育休後は、ほかのクリニックでも経験を積ませていただき、仕事と育児の両立が落ち着いてきた頃に前職のクリニックに再就職することになりました。
前職場に復帰したころ、有難いことに上司から自費リハビリへの参入をご提案していただきました。現在は整形外科クリニック勤務の合間を縫いながら、自費リハビリの活動も拡大させています。
ほかにも、『さいたまピーナッツクラブ』という地域の多胎サークル活動の運営もしています。
私の子どもは双子で、双子の子育てに関する悩みを共有できる環境が少なかったんです。双子育児とコロナ禍で弧立してしまっていた最中、さいたまピーナッツクラブさんが双子をもつ両親向けにオンラインサークルを開催していました。
私も実際に参加してみて、悩みを解決できる有意義な場所となったことをきっかけに、運営のお手伝いをさせていただくことになったんです。
理学療法士として、医療職の知見も共有させてもらう機会もありました。代表から「活動を継続させるために力を貸してほしい」とご提案いただき、現在は団体の副代表として法人化を目標に活動しています。
地域サークルの活動をよりアクティブにするため、育児困難感が強い多胎家庭の現状を周知してもらうために、行政へ協力を求めることもあるんです。
その際は双子母の一人としても、医療職でもある理学療法士としても、必要となる支援を行政へ伝えさせてもらっています。
伊藤さんの活動に対する想いを教えてください!
頼まれた仕事は、必ず引き受けるようにしています!
誘っていただいた仕事は、必ず受けるようにしているんです。
頼っていただけることはありがたいことですし、自分ができることに対しての価値を認めてもらえていると思うんです。
頼られたらすぐに断らずに、とりあえず自分にできることをやってみる。修正はいくらでもできるから、いろんな事業にチャレンジしています。
その考え方で取り組んでみると、意外とできちゃうことがほとんどです。いただいた仕事をしっかりこなしながら、今後の活動を広げていく予定です。
現在は整形外科と自費リハビリ、ピーナッツクラブの活動と毎日バタバタな生活を過ごしていますが、自分のできることが必ず誰かの役に立てることを信じています。
伊藤さんの今後の活動についての展望を教えてください!
自費診療の割合を増やし、日本の理学療法士が世界基準になれるようにと思っています!
海外基準での知識・技術研鑽を続けながら、自費診療の割合を増やしていきたいと考えています。
環境は変わっても臨床から得られる経験は私のなかでとても大きいので、臨床には居続けていたいです。
今後も臨床に立つ機会は確保し、自費リハビリでの活動を拡大して理学療法士の価値を向上していけたらと考えています。
さいたまピーナッツクラブでの活動は、構成メンバーも同じ双子・三つ子のママさん方です。育児や仕事の合間を縫いながらメンバー同士で協力し合って、多胎家庭への支援の輪を広げたいと思います。
現在は理学療法士の働き方や生かし方が広がってきていて、とても良い時代だと思います。働く場所が変わっても、医療職ということを忘れず理学療法士として技術を磨きながら貢献したいです。
この考えは自分のなかで大切にしていて、時代のなかで働き方が変わってきても医療職であるということは忘れず、相手に貢献することが今後の若いセラピストに伝わったら嬉しいです。
THERA-FILを通して伝えたいことはありますか?
仕事の生かし方にバリエーションを持ってほしいです!
理学療法士の仕事は稼げないと思う必要はありません。
この仕事の本質は、単にお金を稼ぐ・稼がないではないです。医療に関わるということは人の命に関わる仕事、人の人生に寄り添える仕事だと誇りに思ってほしいですし、知識や技術を生かす手段はたくさんあります。
なので、働き方の選択肢が増えた今、社会貢献できる方法にバリエーションはあっても良いと思います。理学療法士は、いろいろな業界とコラボしやすい職種だと思いますし、この職種の長所が生かされる場面は多いです。
理学療法士の活動の幅を広げて認知されれば、さまざまなビジネスとタッグを組むことができると思います。
それでも医療職の国家資格として学んだスキルや経験は安売りせず、知識や技術のアップデートは今度も続けてほしいと思っています。
伊藤 千菜美(いとう ちなみ)
理学療法士の資格取得後、クリニックに就職。妊娠をきっかけにキャリアを見直し、介護、スポーツ、外来、訪問、急性期とあらゆる現場で臨床経験を積む。現在はクリニックに勤めながら、自費リハビリ、地域での活動など幅広く活動している。