セラピスト取材メディア『THERA-FIL』は、平均寿命ではなく健康寿命を延ばすために、病院以外で本当の健康を届けるために活躍しているセラピスト(Therapist)を1つの記事(Film)として取り上げています。
医療現場から介護現場へ移り、SNSでの情報発信やオンラインサービスを始めるまでにどのようなストーリーがあったのでしょうか。
サキさんのFilmを覗いてみましょう。
目次
なかまるさんが言語聴覚士の資格を取ろうと思ったきっかけや養成校に入った感想を教えてください!
ある本を読んだことがきっかけで言語聴覚士に興味をもちました!
親が看護師として働いているので、医療職には元々興味があったんです。
親の職場に言語聴覚士の方がいることを教えてもらい、それがきっかけで言語聴覚士という仕事を知りました。
リハビリの仕事には理学療法士や作業療法士、言語聴覚士の3つの仕事があります。
理学療法士はスポーツができる方、作業療法士は手先の器用な方というイメージがあったので、自分は違うなと思っていたんです。
言語聴覚士の仕事について調べるなかで『失語症者、言語聴覚士になる―ことばを失った人は何を求めているのか』という本を読み、言語聴覚士について深く知りたいと思いました。
養成校に入るまで、言語聴覚士の仕事は言葉や声の出し方を指導する仕事だと思っていました。
しかし、養成校に入り高次脳機能や摂食・嚥下障害などの幅広い知識が必要だと知り、言語聴覚士に求められるスキルは非常に多いと気づいたんです。
なかまるさんが現在の事業に至るまでの経緯を教えてください!
さまざまなことに挑戦できると思い、転職を決めました!
私は一度言語聴覚士の試験に落ちてしまい、養成校卒業後に8か月ほどグループホームで勤務していました。
2010年に言語聴覚士の資格を取得し、整形疾患を中心とした回復期病棟と療養型病棟がある病院に勤めることになったんです。
入職して1年半が経ち、院長が体調を崩し回復期病棟を閉鎖することが決まったんです。そのときに病院側は退職者を募っていたので、私も退職を決め同じ地区にある別の病院へ転職しました。
2か所目の職場では、急性期から生活期の患者に関わり摂食・嚥下障害の方や失語症などのコミュニケーション障害の方、発達障害のお子さまや就学前の発音の訓練にも携わりました。
そのほか介護スタッフや看護師、障害者施設への出前講座なども定期的に行い、さまざまな臨床経験を積みながら5年間勤めて別の病院に転職したんです。
3か所目の病院では、おもに超急性期の脳卒中患者のリハビリに携わりながら看護師向けの勉強会の依頼を受けて定期的に開催していました。
そんななか、以前働いていたグループホーム側から声をかけていただいて、病院勤務をしながら月に1回グループホームで勤務をするようになりました。
私は言語聴覚士のほかに、ケアマネジャーの資格も取得しているんですが、グループホームの方から「施設を新設するうえでケアマネジャーを探しているから来てくれないか?」と誘っていただいたんです。
病院でも自分の興味のある分野について関わることができていたので、正直葛藤はありました。
ですが、さまざまなことに挑戦できそうだなと思い、言語聴覚士としてグループホームでの勤務や小規模多機能型居宅介護*のケアマネジャーとして2020年から勤務しています。
*小規模多機能型居宅介護:「通い」サービスを中心に「泊り」「訪問」サービスを1つの事業所で提供し、24時間365日、在宅生活を支援するサービス
なかまるさんがおこなっている具体的な事業内容について教えてください!
言語聴覚士としての勤務に加えて、SNSでの情報発信をおこなっています!
勤務している施設では2024年の4月から保険外での訪問サービスをおこないながら、法人内での介護事業の研修制度の整備やスタッフの育成、マネジメントなども担っています。
また、別法人の小規模多機能型居宅介護でのケアマネージャーとしての業務や訪問看護ステーションで言語聴覚士としての勤務もおこなっているんです。
2023年からは、吃音のオンラインカウンセリングやSNSで介護および医療従事者、学生に向けて摂食・嚥下に関する情報発信もおこなっています。
SNSでの情報発信を始めたきっかけとしては、私が医療現場から介護現場に転職し医療と介護のギャップを強く感じたからです。
介護業界で働く言語聴覚士は、依然として少ないと思うので介護業界に摂食・嚥下の情報を届けたいと思っています。
また、言語聴覚士でも病院だけではなく、介護現場でも働けることを実際に介護施設で働く立場から届けることで、言語聴覚士が働く場所の選択肢を広げたいと考えています。
活動に対するなかまるさんの想いや今後の展望について教えてください!
言語聴覚士が自信をもって臨床に臨めるようにサポートしたいです!
多職種に摂食・嚥下の領域に興味をもってもらいたいと思います。そのためには、言語聴覚士として摂食、嚥下面での相談ができる環境を整えたいと考えています。
介護現場で言語聴覚士の人数が少ないので、利用者さまの嚥下機能をサポートする役割を担っているのは、看護師や介護士です。
ただ、私は症状から評価し介入までおこなえることが言語聴覚士の強みだと考えていいます。
評価や介入に関するアドバイスや相談ができる環境をつくることで、介護分野へのハードルを下げるような活動や介護施設などに向けてオンライン相談サービスなどを提供していきたいんです。
さらに、過去の私のように資格を取得したばかりの新卒の言語聴覚士や、一人職場の方など周りになかなか相談ができない方に、何らかの形で関わっていきたいと思いがありました。
そこで、『コトノミASSIST』というオンライン相談サービスを立ち上げました。
コトノミASSISTとは、その名のとおり”コトバ”と”ノミコミ”に困っている方を助けるという意味を込めています。一般の方、介護・医療の専門職、法人の方問わず利用できるオンライン相談サービスです。
さまざまな仕事を同時におこないながらなので、対応できる時間は限られますが、クライアントからの依頼にしっかりと向き合いながら、さらにたくさんの経験を積んで成長したいと思っています。
また2025年度には、公認心理士(公認心理師)を生かしたスクールカウンセラーとして活動することも検討しています。
THERA-FILを通して伝えたいことはありますか?
働き方の選択肢を狭めないためにも、さまざまなことに興味をもってください!
学生の頃は、まずは大きい病院に就職しようと考えるなど周りの同級生や先生に言われたとおりにする方が多いですが、今の時代は働き方が多様化しています。
働き方の選択肢を狭めないためにも、さまざまなことに興味をもつと良いと思います。
資格自体は、手段でしかありません。資格を取ってゴールではなく、この資格をもとに自分が何をしていきたいのかを考えていくとおもしろいキャリアが選べると思うので、今後の働き方を明確にしていきましょう。
なかまる
言語聴覚士資格取得後、急性期から生活期、小児領域を経験。転職後、グループホームや介護施設などで勤務。現在は介護施設や訪問看護ステーションでの勤務に加え、ケアマネージャー業務や吃音のオンラインカウンセリング、SNSでの情報発信をおこなっている。現在は”コトバ”と”ノミコミ”に困っている方を支援するオンラインサービス『コトノミASSIST』を運営中。