セラピスト取材メディア『THERA-FIL』は、平均寿命ではなく健康寿命を延ばすために、病院以外で本当の健康を届けるために活躍しているセラピスト(Therapist)を1つの記事(Film)として取り上げています。
病院勤務から会社設立に至るまでにどのようなストーリーがあったのでしょうか。
上堀さんのFilmを覗いてみましょう。
目次
上堀さんが理学療法士になろうと思ったきっかけを教えてください!
手に職をつけ、スポーツに関わる仕事に就きたいと思ったからです!
私が中学生の頃に手首のけがを負い、整形外科で施術を受けたんです。
高校生になり、職業について本で調べていたところ、理学療法士という名前を見て、名前が格好良いなと思っていました。
野球部に所属していたこともあり、スポーツに関わる仕事に携わりたいと思い、理学療法士を目指したんです。
また「母から手に職をつけなさい。」と言われており、兄も薬剤師を目指していたので私も専門的な仕事に就きたいと考えたことも、理学療法士を目指した理由の一つです。
上堀さんが理学療法士の養成校に入った感想や現場に出た感想を教えてください!
予想よりも勉強が難しくて大変でした!
高校が自由な校風だったので、大学に進学したらもっと自由にできると思っていたんです・・・
実際は、カリキュラムが事前に決まっており、高校生の頃よりも自由度は低かったですね。勉強内容も難しく、実技試験や口頭諮問など特に1年生の頃は苦労しました。
大学卒業後は、地元でも比較的大きな医療法人に就職し、回復期リハビリに配属されると事前に伺っていたんですが、実際は通所リハビリに配属されたんです。
1年目の途中から訪問リハビリに配置転換となり、現場に出てからは介護保険分野に携わっていました。
経験年数も浅いなか同じ部署にいらっしゃったのが臨床15年目ぐらいの方だったので、自分の力量不足を痛感することも多く自分に対して憤りを感じていたんです。
病院で働きたいという想いが強かったので、上司に交渉を続けていたんですが、人員の問題があってそれは叶いませんでした。
そこで考え方を変え、結果を出して病院に認めてもらおうと考えたんです。
訪問リハビリでは、訪問業務だけでなく訪問スケジュールの調整や担当の割り振り、ケアマネージャーの方から新規の依頼の受け入れ、売上などの計算などマネジメント業務を経験することができました。
上堀さんが自身で活動や事業を始めた経緯を教えてください!
予防の重要性を伝えるためには個人事業主では限界があると感じ、起業しました!
訪問リハビリでの仕事を4年間経験し、臨床5年目の2016年に回復期リハビリテーションセンターに異動したんです。
そこでは、回復期リハビリから訪問リハビリへの移行を円滑に進める仕事をおこない、チームを任されていました。
2019年に医療法人を退職し、訪問看護ステーションに転職したんです。同時期に、以前病院で勤務していた頃にリハビリをした患者さまから相談を受けたことが、私にとって大きな転機となりました。
その患者さまは、熱心にリハビリにも取り組んでいたので自立レベルまで回復したんです。
自立レベルとなり、現行の保険制度ではリハビリを続けられなくなってしまうことを危惧されていました。
私に「リハビリを受ける手段はないか?」と質問してくださったので、そこで私が行きますと伝えたんです。
自費でのリハビリを提供するために、訪問看護ステーションで勤務しながら2019年に『WALKING+』を立ち上げ、個人事業主として活動を始めたんです。
自費リハの提供に加え、もっと予防の重要性を伝えたいと考え、活動を始めていました。個人だけでなく企業にも介入していきたかったんですが、個人事業主では相手にもされないことも多々あったんです。
そこで、2023年に『株式会社REOL』を設立し、現在に至ります。
上堀さんが取り組んでいる事業や活動について教えてください!
仕事における”職業病”を解決していくために、企業向けの健康経営支援をおこなっています!
個人では、大阪府の寝屋川市で介護予防教室を開催したり、以前から関わっていた方に対しては自費リハビリをおこなったりしています。
法人としては、企業向けの健康経営支援事で、仕事における”職業病”の解決し、生産性向上や働き手の確保を支援する『サポタス』を提供しています。
理学療法士の評価を生かして、現場分析やフィジカルチェックをおこなっています。その結果から、運動プログラムのご提供や個別介入をおこない、職業ごとの健康課題の解決をサポートしています。
具体的には理学療法士が評価をおこない、お客さまの弱い部分や苦手な動きを把握し分析をおこなったうえで、それに合わせたプログラムや運動指導をおこないます。
また小学校などの教育機関での子ども、保護者向けの『カラダの授業』と称し身体の使い方を学ぶ場を提供しているんです。
事業を通して、産業医・看護師(保健師)に加えて、産業保健スタッフとして理学療法士が各企業に関わっている社会を目指しています。
上堀さんが事業にかける想いを教えてください!
不調を予防することの重要性を伝えたい、そして理学療法士にさまざまな分野で活躍してほしいです!
日本では不調が出てから病院に行くというのが一般的なので、さまざまな症状や病気を患った方をみてきました。
ただ、もっと早く私たちが携わっていれば予防できたなと感じることが多かったんです。
人の幸せや豊かさは、カラダが動くことが前提となっていることが多く、失うことで人生にさまざまな制限が出てしまいます。
それが、患者さま本人のやる気や生きがいを奪っていくんです。
そこで、私たち理学療法士の知識と技術を生かし、予防の重要性を知ってほしいという想いがあります。
また、理学療法士の皆さま自身の知識と技術の使い方は無数にあることを知ってほしいです。最も重要なのは、どうすれば人の役に立てるかを考えることです。
理学療法士は、年齢や症状の有無にかかわらずサービスを提供することができ、幅広い分野での活躍が期待できます。
だからこそ、自分の動き方次第でさまざまな働き方ができることを知ってほしいです。
上堀さんの今後の展望について教えてください!
身体の使い方を学ぶ重要性を伝えたいです!
法人としては、サービスを導入していただく企業を増やしていきたいと考えています。最終的には、1企業に1人は専属の理学療法士が在籍しているような形を目指していきたいです。
そのような活動を通して、産業保健スタッフの一員として理学療法士が在籍しているという認識を一般的なものにしていきたいです。
企業だけなく、個人を対象としたセミナーを開催することで身体の使い方を伝え、予防の概念を広めていきたいと考えています。
THERA-FILを通して伝えたいことはありますか?
視野を広げてさまざまなものに興味をもち、活躍の幅を広げてください!
理学療法士や作業療法士、言語聴覚士も身につけている知識や技術は、専門的なものです。
ただ専門的であるからこそ、病院や施設などでしか生かせないという考えに捉われ、視野が狭くなる傾向があります。
セラピストはもっといろいろなことに興味をもち、視野を広くするべきです。そのうえで情報が欲しい、話を聞きたいということであれば、私の経験を共有させていただきます。
私が共有することで、皆さんに理学療法士の将来は明るい、素敵な職業だと思ってもらえたら嬉しいです。
病院や施設にいる方も現在の居場所に捉われず、さまざまなことに興味をもち自分が目指す働き方や目的を見つけ、活躍の幅を広げてください。
上堀 元太(うえほり げんた)
理学療法士の資格取得後、通所リハや訪問リハを7年間経験。訪問看護ステーション転職後、予防医療の重要性に気づき、『WALKING+』として、自費リハや介護予防教室を開催。現在は『株式会社REOL』を立ち上げ、企業向けの運動指導やヘルスリテラシー教育などのサービスを提供。予防医療の推進に加え、理学療法士の活躍の幅を広げるために日々活動中。