セラピスト取材メディア『THERA-FIL』は、平均寿命ではなく健康寿命を延ばすために、病院以外で本当の健康を届けるために活躍しているセラピスト(Therapist)を1つの記事(Film)として取り上げています。
病院勤務理学療法士から妊活サポート事業を行うに至るまでにどのようなストーリーがあったのでしょうか。
齋藤さんのFilmを覗いてみましょう。
目次
齋藤さんが理学療法士になろうと思ったきっかけを教えてください!
憧れの先輩が理学療法士として働いていたことがきっかけです!
幼稚園から高校3年生までサッカー部に所属していました。全国大会出場経験のあるような高校のサッカー部に所属しており、全国大会出場に向けて一生懸命練習に打ち込んでいたんです。
高校2年生のときに、左膝半月板をけがをして、手術を受けてリハビリを受けたんです。そのとき、初めて理学療法士という職業を知りました。
リハビリを担当してくださった理学療法士の方が、たまたま同じ高校のサッカー部の先輩だったことにはとても驚きました。その方は、自身の高校が初めて全国大会に出場した世代の先輩だったんです。
当時、目標としていた全国大会にも出場された経験があり、部活の先輩としても尊敬できる方だったので、その方との出会いは私にとって印象的な出来事となりました。
私は理学療法士のことを知る以前から、漠然と福祉系の仕事に就こうかなと考えていたんです。先輩との出会いがあったことで、福祉系の仕事のなかでも理学療法士はスポーツに関わることができて、身体の不調で悩んでいる方の助けになれるのだとしたら素敵な仕事だなと思ったんです。それから、理学療法士になりたいという想いが強くなりました。
実際に理学療法士になってみてどうでしたか?
良い仕事に就いたなと思いました!
学生時代の頃は、社会復帰に向けて身体の機能回復をサポートしていくのがリハビリだと考えていました。しかし、実際に学生のときにお世話になった実習先では、療養病棟やデイサービスなど、どちらかというと回復というより現状を維持することが目的となっている方が多かったんです。
そのような現場を見たときに、今まで自分が持っていた理学療法士のイメージとのギャップを抱くようになりました。
そのギャップを感じてからは、私に理学療法士は合っているのか。この道で本当に良かったのかな・・・と不安になり、自問自答した時期があったんです。
それから、学校を卒業して急性期の病院に就職しました。急性期は、維持を目的としたリハビリと全く異なり、患者さまの身体機能や症状がみるみる良くなっていく経過を追うことができ、今まで勉強したことは無駄ではなかったなと実感したんです。プロ意識ではないですが、良い仕事に就いたなという想いが湧きましたね。
ただ急性期にいると、何回も入退院する方を目の当たりにすることも多かったんです。3日間入院して無事に退院したのに再入院される方や、改善する目的で来院されたにも関わらず、容態が急変する方もいらっしゃいました。
病院で状態が悪化していく方を目の当たりにしたとき、ほかにも介入できる方法があったのではないかと無力感に襲われることが何度もあったんです。
齋藤さんが今の活動に至るまでのきっかけを教えてください!
私自身が不妊で悩んでいたことがきっかけです!
急性期で勤務を始めて1年ぐらい経ったときに、元気な高齢者を増やしたいという想いから身体の不調を予防することを目的とした地域の活動を増やしていきたいと考え始めました。病気にならない身体つくりを提案したかったのですが、急性期では予防を目指した取り組みを始めにくい環境だったんですよね。
そこで違うフィールドも経験してみたいと思い、訪問看護ステーションへ転職しました。立ち上げたばかりの会社だったということもあり、臨床業務よりも店舗拡大に向けての業務が多かったですね。管理職を任されていたこともあり、現場で働く機会も少なくなっていたことに少しモヤモヤしていました。
たとえ管理職ではなく平社員に戻ってもいいから現場で働きたいということで、再度転職をして、平社員として働きながら予防を目的とした自宅サロンを始めました。
その当時私は結婚していたんですが、なかなか子供を授からず検査をしてみると私の精子の数値が悪いことが判明したんです。不妊に悩む夫婦のなかに、私たちと同じ悩みを抱えている方がいるのではないのかと考えました。すると実際に、同じように精子機能が問題で子供が授かりにくいという悩みを抱えている夫婦が多くいらっしゃいました。
それから、日本全国に悩んでる方がいるのであればオンラインという形でサポートしようと思い、不妊で悩む方のオンラインサポートを始めたんです。
2023年の2月からは会社員としてリハビリ関係の仕事を続けつつ、個人事業主としてサロン経営やオンラインで妊活サポートという今の事業形態になりました。
齋藤さんの現在の活動の具体的な内容を教えてください!
オンラインで食事の生活習慣改善のサポートをおこなっています!
まずX(旧Twitter)やInstagramを使い、検査を受けて精子機能に問題があった方に対するアドバイスを発信しているんです。そこでいただいたお悩みに対して個別に相談を受け、オンライン上でのカウンセリングを通して、生活習慣の改善やセルフケアなどのアドバイスをおこなっています。
アドバイスの内容としては、現状の食事を確認して評価基準に沿った食事指導をおこなっています。水分は摂取できているのか、排便コントロールが適切におこなえているのかなどを評価し、ほかにも基礎代謝や腸内環境の状態も判断の基準です。
現状を評価したうえで、体の酸化を防ぐために使っている油を変えたり、ナッツなどの抗酸化物質が多く含まれる食べ物を摂取したりなどのアドバイスをおこなっています。
実際に、少し食生活を改善したら不妊の悩みが解決する方も結構多いんです。
いきなりすべて変えることは難しいので、ご本人のハードルに合わせて副菜を一品追加するなど、できるところから段階を追ってお伝えすることを意識しています。
公式LINEで随時相談を受け付けており、1週間に1回以上は必ずやり取りし、相談をいただいたらすぐに返信するという流れです。
ただオンライン上で、画面越しにお顔を見てお話をしたほうが具体的な話が聞けるので、1回1時間、月に2回はZoomでカウンセリングを行うようにしています。
活動に込められた齋藤さんの想いや軸となっているものを教えてください!
妊活は夫婦で取り組むものであることを伝えたいです!
不妊に関する相談の8割は奥さまからなんですよ。男性側も検査は受けられているのですが、そこで数値が悪くてもあまり問題だと自覚していない男性が多い傾向にあります。ですが奥さまとしては、妊活のために生活習慣を変えてほしいという想いを持っています。
そんな想いから匿名のアカウントをつくり、情報収集をした先に私のアカウントにたどり着いて、ご相談いただくケースが多いんです。
具体的には旦那さまが自分事として考えてくれなかったり、生活習慣を変えると言って変えてくれなかったりなどのお悩みが多いですね。そこで、奥さまが旦那さまに伝えにくいことを代わりに私がズバズバと伝えています。
必死に妊活に取り組まれている旦那さまは別ですが、旦那さま自身から連絡がくるほうが少ないのが現状です。SNSでも妊活について発信をしていますが、内容としては論文の内容をベースに、読みやすいようにするためにイラストやデザインを入れるなどの工夫をしながら発信しています。
どうしても妊活=女性のイメージがまだまだ強いなと思います。その背景には、妊娠するのは女性で、子どもを授からないのは女性に原因があるかのような潜在意識を持っている方が多い傾向にあるんです。
そこで、男の私が妊活について発信することで、より男性の方々にも伝わりやすいのではないかと考えています。私も不妊の原因が男性にあると思っていなかったので、妊活は夫婦で一緒に取り組むものという概念を伝えて、正しい概念を広く認知されるように活動していきたいですね。
齋藤さんの今後の展望を教えてください!
妊活サポートのロールモデルを創りたいです!
理学療法士の仕事は好きなので、今後も続けていきたいと思っています。しかし、私にも家族がいてその家族との時間を増やしたいので、オンラインのサポートを事業として成り立たせたいという目標があります。
今までご相談を受けていていた方は、地方の方が多かったんです。そこでオンラインサポートであれば、場所を問わず行うことができます。おそらく移動に費やす時間やお金が必要だったり、治療に行きにくかったりすることが影響していると思います。これがオンラインで完結できるようになったら、もっと多くの方の悩みを解消する助けになるはずです。
現在、不妊に対して悩んでいる方が多くいらっしゃるのにも関わらず、男性向けの発信は少ないという問題があります。そこで男性のケアをできる方、寄り添える方がもっと増えたらいいなと思っているので、妊活サポートサービスを実行するためのマニュアル作成をしていきたいです。
考え方は人材育成に近いですが、そのマニュアルを使って、不妊についての知識を伝えることができる方を育てられるようなロールモデルを創っていきたいと考えています。
啓発活動の一環として、2022年の3月に電子書籍も出版しました。
内容としては、私自身の不妊の経験や出産までの経緯、男性不妊が原因であったとしても奥さまにも負担がかかってしまうことなど、私自身の経験談を記載しています。
不妊治療に悩まれているご夫婦に、ぜひ読んでいただけると嬉しいです。
また、妊活のセミナーもやってみたいと考えています。以前、ご相談者のなかに管理栄養士の方がいらっしゃいました。そのとき、管理栄養士などのさまざまな職種の方々と協力して、あらゆる分野からサポートすることができれば、もっと多くの方々の助けになれるはずだと思ったんです。
それらを実現するために、今後も活動していきたいと考えています。
THERA-FILを通して伝えたいことはありますか?
妊活を応援し合える環境になってほしいです!
現代には、ブライダルチェックという検査があります。これは妊娠や出産を妨げてしまう病気や感染症などの有無を調べる検査のことです。この検査を、女性だけでなく旦那さまも一緒に検査をすることが当たり前になるよう、認知度を広げていきたいと思います。
特別な検査という認識ではなく、健康診断を受けるくらいの感覚で身近な存在になってほしいですね。理想は、健康診断の検査項目の一つとして当たり前に組み込まれるといいなと考えています。
ただ、女性も男性も妊活をしていることを周りに言いにくい風潮がまだあるんです。その風潮が、友達や親など周りの方に気軽に伝えやすいよう変わってほしいと思います。普通の会話として話せるぐらい、フランクな話題になるといいですね。
妊活していることを周りに伝えやすくなると、世の中の風潮も変わっていくと思います。妊活していることを周りに伝えることで、周りの方も妊活を応援してくれるようになる。そんな世界だったら、とても心強いはずです。
そのためにも、妊活や男性の精液検査の認知度を高めることが必要です。妊活のことを知らないままだとどうしても臆病になってしまい、扱いにくい話の内容のままでしょう。特に男性の精液検査は認知度が低いので、学校教育の段階から伝えていくことも多くの方々に知ってもらう方法の一つだと思います。
妊活や不妊について発信することで認知度を広げ、妊活をポジティブに捉えられるように活動を進めていきたいと思います。
特に男性は、ほか人の事と思わず自分事として出産や妊娠のことを考えてほしいです。
齋藤 拓海(さいとう たくみ)
理学療法士の資格取得後、病院や訪問看護ステーション勤務を経験。自分自身が
不妊治療に取り組んだことがきっかけで男性向けに不妊治療に関する発信を開始。全国各地から相談を受けるようになり、オンライン上で妊活をサポート。
現在は訪問看護ステーションに勤務しながら、
整体、妊活サポート、電子書籍の出版など多岐にわたり活動中。